マラサーニャ地区(Barrio de Malasaña)は、南をグラン・ビア(Gran Vía)、東をフエンカラル通り(Calle Fuencarral)、北をカランサ通り(Calle Carranza)、西をサン・ベルナルド通り(Calle San Bernardo)に囲まれた不等辺四角形の区域です。
この地区の名前は、フランス軍に対する1808年5月2日の蜂起の際のマドリードのヒロイン、マヌエラ・マラサーニャ(Manuela Malasaña)にちなんで付けられました。マラサーニャ地区の中心であるドス・デ・マジョ広場(Plaza del Dos de Mayo)は、ルイス・ダオイス(Luís Daoíz)とペドロ・ベラルデ(Pedro Velarde)の指揮下、蜂起の起点となったモンテレオン砲廠(Parque de Artillería de Monteleón)があった場所で、この史実は同地区で非常に重みを持つものです。現在の広場には、旧兵営のアーチと、前述の指揮官2名に敬意を表して建てられたモニュメントが保存されています。
地区内に、「バジェスタ通り(Calle de la Ballesta)の三角形(トリアングロ)」を略号にしたトリバル(Triball)が位置しています。新しい店舗が持続可能な商業のモデル地区として推進する新興地区です。トリバルは、文化、ファッション、飲食の各エリアの誕生とともに再生した地区であることが特徴です。
歴史博物館(Museo de Historia)
建築家ペドロ・デ・リベラ(Pedro de Ribera)が手がけた18世紀マドリード・バロック様式建築の代表作、アベ・マリア・イ・サント・レイ・ドン・フェルナンド王立孤児院(Real Hospicio del Ave María y Santo Rey Don Fernando)の建物を利用しています。歴史博物館は、マドリードの歴史や都市計画の進展、芸術、マドリード市民の日常生活と習慣を示す貴重なコレクションを所蔵しています。
サン・アントニオ・デ・ロス・アレマネス教会(Iglesia de San Antonio de los Alemanes)
現在の建物は1624年から建造が始まり、ペドロ・サンチェス(Pedro Sánchez)、フランシスコ・セセニャ(Francisco Seseña)、フアン・ゴメス・デ・モラ(Juan Gómez de Mora)といった当時の建築家たちが携わりました。平面図が楕円形で、全体に塗装が施されている、他には類を見ない教会です。装飾には、フランシスコ・リシ(Francisco Ricci)、フランシスコ・カレーニョ・デ・ミランダ(Francisco Carreño de Miranda)、ルカ・ジョルダーノ(Luca Giordano)などの巨匠たちが参加しました。
王立精密・物理・自然科学アカデミー(Real Academia de Ciencias Exactas, Físicas y Naturales)
数学、物理学、化学、生物学、工学、その他の科学の研究と調査を行う公的なアカデミーで、スペイン研究所(Instituto de España)に組み入れられている機関です。27,000冊以上の蔵書の他、科学雑誌、手写本、地図など様々な資料で構成されている図書館があります。
サン・マルティン教会(Iglesia de San Martín)
17世紀後半のマドリード・バロック様式とされる教会。1648年頃、ホセ・デ・バルデモロ神父(Padre José de Valdemoro)神父によって建設されたと考えられています。ラテン十字型の平面構成で建物正面が目を引きます。建物正面の作者に関する記録はありませんが、ホセ・デ・チュリゲラ(José de Churriguera)作とされています。
ドス・デ・マジョ広場(Plaza del Dos de Mayo)周辺の魅力ある細い通りの主役は小規模店舗。新品・古着のビンテージファッションストア、Generación X、Elektra Cómicなどのコミックショップが際立っています。
過去十年においてバジェスタ(Ballesta)、バルベルデ(Valverde)、デスエンガニョ(Desengaño)、コレデラ・バハ ・デ ・サン パブロ(Corredera Baja de San Pablo)、(Barco)、ソレダッド・トレス・アコスタ広場(Plaza Soledad Torres Acosta)などの通りにはカルチャー、モード、飲食店によって活気がもたらされました。その一例が、マラサニャ地区はもとよりマドリード全体でも名を馳せ、中古品やヴィンテージ品を扱うTemplo de Susuです。
マラサーニャは実に様々なガストロノミーが楽しめる地区です。冷たい生ビールを定番タパスと一緒に味わえる伝統的なタベルナ(居酒屋レストラン)が多数あります。中でも有名なのが、1892年の創業以来樽出しのベルモットやビールと一緒に、豚の耳のフライ、スペイン風オムレツ、魚介類の保存食といった伝統的なタパスを提供しているBodega de la Ardosaや、Casa Fidel、Casa Julio(この店のコロッケはボノ率いるロックバンドU2をも魅了)、Casa Camacho、La Camochaです。
この地区のもう一つの主役はテラスです。テラスの雰囲気を満喫できる主なスポットは、ドス・デ・マジョ広場、通称「グリアル広場(Plaza del Grial)」のサン・イルデフォンソ(San Ildefonso)広場、通称「ルナ広場(Plaza de la Luna)」のマリア・ソレダ・トーレス・アコスタ(María Soledad Torres Acosta)広場です。伝統的な料理を楽しめるテラスから、前衛的な料理を味わえるテラスまで、その内容は実にバラエティに富んでおり、オーガニック料理やベジタリアン、ビーガン料理を出す店もあります。アルゼンチン出身のシェフ、ハビエル・メドヴェドフスキー(Javier Medvedovsky)。