マドリード自治州の北東、ハラマ川流域中間部に位置するトレラグーナ(Torrelaguna)は、シスネロス(Cisneros)枢機卿とラ・カベサの聖女マリア(Santa María de la Cabeza)の出生地であるとともに、聖農夫イシドロ(San Isidro Labrador)が住んでいたという歴史と、通りの散策へといざなう歴史地区(1974年に歴史・芸術的建築群に指定)の建築で有名です。
この村の象徴的な場所は、美しいマヨール広場(Plaza Mayor)。広場には、1514年にシスネロス枢機卿が穀物倉として建造した村役場や、マドリードのゴシック建築の優れた一例であるサンタ・マリア・マグダレナ教会(Iglesia de Santa María Magdalena)があります。教会には、詩人フアン・デ・メナ(Juan de Mena)が埋葬されている他、シスネロス枢機卿の父であるアルフォンソ・ヒメネス(Alfonso Jiménez)の墓石が収められています。広場には、エルマナス・フランシスカナス修道院(Convento de las Hermanas Franciscanas)と、枢機卿の生家があった場所に1802年に建てられたシスネロスの十字架(Cruz de Cisneros)もあります。枢機卿は故郷を良くするための支出を惜しまなかったとされています。
村を歩くと、15世紀の城壁の遺跡、マドレ・デ・ディオス・フランシスコ会修道院(Monasterio Franciscano de la Madre de Dios)などの宗教建築、最近修復された穀物市場(Alhóndiga)、モンタルバン・センター(Centro Montalbán)、文化センター(Casa de la Cultura)などの民間建築も見つけることができます。また、アルテアガ邸(Palacio Arteaga)、サリナス邸(Palacio Salinas)、バルガス邸(Casa Vargas)など、トレラグーナのかつての全盛期を今に伝える家や豪邸も目を引くことでしょう。
トレラグーナのエピソードとしては、ケイリー・グラントとソフィア・ローレン主演の映画『誇りと情熱』の撮影場所の一つであったという、興味深いものがあります。
近郊では、18世紀末から19世紀初頭にかけて建設されたカバルス水路(Canal de Cabarrús)や、イサベル2世水路(Canal de Isabel II)を訪れてみたいものです。イサベル2世水道局は村郊外に本社があります。ハラマ川流域中間部の自然環境は豊かな水利遺産に恵まれています。